子宮筋腫

子宮筋腫とは

子宮筋腫の説明イラスト
  • A:漿膜下筋腫
  • B:粘膜下筋腫
  • C:筋層内筋腫

子宮壁の筋肉の一部に発生するコブのような塊のことを子宮筋腫と言います。これは良性腫瘍の一種です。発生や腫瘍が増大する原因には女性ホルモンが関係していると言われています。なお子宮筋腫の大半は子宮体部で発生しますが、子宮頸部や子宮腟部に発生することもあります。

先にも述べましたが、良性腫瘍なので速やかな治療を要するということはないです。ただ発生部位や大きさによっては、何らかの症状がみられ、中には手術をする必要もあります。よくみられる症状は、月経困難症、過多月経・貧血、不妊です。このほか、腫瘍が大きくなって周囲の臓器を圧迫するようになると、腰痛、頻尿、便秘、尿閉などの症状もみられるようになります。

治療について

画像診断(経腹・経腟超音波検査、MRI等)の検査で悪性の疑いがないと診断され、症状がなければ経過観察となります(3~6ヶ月程度の間隔で通院します)。過多月経・貧血などの症状があったり、不妊症の原因と思われる場合は、ホルモン製剤による投薬療法や、筋腫核出術(筋腫のみ取り除く手術)による治療が検討されます。

また症状がある良性の患者さんで将来的に妊娠の希望がない、あるいは悪性の疑いがある場合は、子宮を全て摘出する手術(子宮全摘出術)が選択されることがあります。

卵巣腫瘍

卵巣腫瘍とは

卵巣は子宮の左右に1つずつあり、3cm位の大きさです。
卵巣腫瘍は種類が多く、その発生起源から表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍などに大別されます。それぞれ、良性腫瘍、悪性腫瘍(卵巣がん)、境界悪性腫瘍に分類されます。卵巣腫瘍の9割が良性腫瘍です。

  • 表層上皮性・間質性腫瘍:表面の細胞などから発生
  • 性索間質性腫瘍:ホルモン産生の細胞から発生
  • 胚細胞腫瘍:卵子から発生

内容物によって、漿液性・粘液性・子宮内膜症性などに分類されます。
子宮内膜症による卵巣腫瘍はチョコレート嚢胞と言われます。

腫瘍が小さい間は自覚症状が現れにくいです。その後、ある程度まで腫瘍が大きくなると、お腹にハリ(腹部膨満感)、下腹部痛、頻尿などの症状が起こるようになります。また何らかの原因で腫瘍が破裂、捻れる(卵巣腫瘍茎捻転)などすると、急激に腹部が強い痛みに襲われることもあります。その場合は緊急手術を要することもあります。

治療について

検査の結果、悪性の疑いがなく腫瘍も大きくなければ、経過を観察します。最初は1〜3ヶ月後、その後は3〜6 ヶ月毎に超音波検査や血液検査で観察します。良性腫瘍でも5cm以上の大きさの場合や、妊娠時、または症状がある場合には外科的治療(手術)の対象となります。大きさや癒着の程度などにより腹腔鏡下での切除も可能です。

悪性腫瘍の場合が卵巣がんであり、卵巣だけでなく、子宮など周囲の器官も摘出することが大半です。ただ、年齢や腫瘍のタイプ・発生している範囲によっては、子宮や卵巣を温存することが可能になることもあります。

子宮内膜症

子宮内膜症とは

子宮内膜症の説明イラスト

子宮内膜によく似た組織が、子宮の中以外の場所で発生している状態が子宮内膜症です。発生場所としては、骨盤内が一番多く、卵巣・卵管、腹膜、ダグラス窩等、子宮周囲で起きることが大半です。なお子宮以外の場所で出血が起きることで、臓器に炎症がみられる、臓器同士が癒着するなどしていきます。子宮内膜症による卵巣腫瘍がチョコレート嚢胞です。

発生の原因はさまざま言われていますが、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが関係していると考えられています。なおエストロゲンの分泌量が多くなるとされる20~30代の世代が発症しやすいです。

よくみられる症状は、月経の度にひどくなると言われている月経痛、慢性的な骨盤痛、排便痛、性交痛などです。このほか、不妊の原因となりえます。

治療について

痛みを和らげる対症療法として、鎮痛薬(NSAIDs)や漢方薬などが用いられます。

また子宮内膜組織の増殖を抑える治療として、ホルモン剤による投薬療法も行います。具体的には、黄体ホルモン製剤(プロゲスチン製剤)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin : LEP)が用いられます。鎮痛薬の効果が不十分の場合には、レボノルゲストレル放出子宮内システム:ミレーナを使用します。

なお薬物療法だけでは効果が乏しい、卵巣腫大がみられる場合は、手術療法が検討されます。この場合、保存手術と根治手術の二種類あります。前者は、子宮と卵巣を残し、腹腔鏡下で病巣だけを取り除く、あるいは癒着の剥離などを行います。後者は、卵巣や子宮を全摘出するもので完治を希望される方に行われる手術です。開腹による手術が多いですが、腹腔鏡下で行うこともあります。