月経困難症

月経困難症とは

月経の流れの説明イラスト

月経直前あるいは月経の開始と同時に起きる、日常生活に支障をきたすほどの強い症状が現れている状態を言います。

よく見られる症状は、下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気、腹部膨満感などですが、月経が終了する頃にはおさまります。

月経困難症は器質性月経困難症と機能性月経困難症に分けられます。
前者は、何らかの疾患が原因で月経困難症がみられている場合です。具体的には、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などが原因疾患として挙げられます。

後者は、原因となる疾患がないのに月経困難症の症状がみられる場合です。初経からそれほど時間が経過していない時期に起きることが多いです。原因としては、子宮そのものが未成熟である場合、プロスタグランジン(子宮収縮物質)が過剰である場合に起きやすくなります。このほか、子宮頸管が元々狭いことが原因のこともあります。いずれにしても、成熟していくことで安定して症状が軽減していくことも多くあります。

治療について

まずは症状に合わせての対象療法になります。機能性月経困難症の患者さんであれば、プロスタグランジン合成阻害薬である鎮痛薬(NSAIDs)が用いられます。また排卵を抑制すると症状が軽くなることが多いため、黄体ホルモン製剤(プロゲスチン製剤)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin : LEP)、またはレボノルゲストレル放出子宮内システム:ミレーナを使用することもあります。

器質性月経困難症の患者さんも、強く出ている症状を緩和させるために上記の対症療法を行いますが、それと同時に原因疾患の治療も行っていきます。

月経前症候群(PMS)

月経前症候群とは

「月経前3~10日間の黄体後期に発症する多種多様な精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するもの」とされます(日本産科婦人科学会 産科婦人科用語集)

月経前症候群で現れる主な症状

精神的症状

  • イライラする
  • 抑うつ状態
  • 不安
  • 情緒不安定
  • 興奮しやすい
  • 無気力 など

身体的症状

  • 乳房や下腹部の緊満感
  • 頭痛
  • 関節痛・筋肉痛・腰痛
  • 体重増加
  • 手足のむくみ など

月経痛と比較すると精神症状がみられやすいとされ、若い世代で訴える方もいますが、40代~更年期世代の方にもよく見られます。

原因の詳細は不明ですが、黄体ホルモン代謝物に対するGABA-A受容体、セロトニン作動性ニューロンの感受性との関連が報告されています。

治療について

患者さんが訴えている症状や原因によって内容は異なりますが、排卵を抑制させると症状が軽快することが多いため黄体ホルモン製剤(プロゲスチン製剤)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin : LEP)を投与します。なかでも、ドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合錠は月経前不快気分障害に有効性が認められています。
むくみの症状には利尿薬が使用されます。また、生活習慣を改善させることも必要で、ストレスを溜めない、適度な運動をする、食生活を改める(塩分をできるだけ控える など)といったこともお勧めします。また強い痛みの症状があれば、痛み止めとしてNSAIDs(鎮痛剤)、精神症状が主体の場合は選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRIなどを使用することもあります。

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin : LEP)

月経困難症、過多月経の改善効果があります。保険適応です。ほぼ同じ時刻に1日1回内服します。

周期投与 1ヶ月に1回の休薬期間を設ける内服方法です。
毎月の消退出血とそれに伴う頭痛や気分変調などがみられることがあります。
連続投与 休薬期間がない内服方法です。日本では77日間連続投与法のLEPと、出血があった際に休薬期間を設けるフレキシブル投与法があります。

連続投与の方が、月経痛を有意に軽減すると報告されています。

嘔気などの消化器症状の副作用を認めることがあります。体重増加には無関係と言われています。重篤な副作用に、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)があります。
しかし、VTEは妊娠中の女性や褥婦では、さらにリスクが高いです。脳卒中は高血圧、片頭痛を認める場合に、心筋梗塞は高血圧、喫煙者の場合にリスクが上昇します。手術前後には休薬が必要です。
卵巣がん、子宮体がん、大腸がんの発生頻度は減少します。

黄体ホルモン製剤(プロゲスチン製剤)

1.0mg製剤は子宮内膜症治療・子宮腺筋症に伴う疼痛改善を目的に内服する薬です。0.5mg製剤は月経困難症の治療薬です。どちらも保険適応です。
1日2回1錠ずつ、月経周期2~5日目より経口投与を開始し休薬期間を設けずに継続します。
不正性器出血がみられることがありますが、開始後2〜3ヶ月目が多く、半年以降はおちついてくることが多いです。また、更年期症状が副作用に記載されています。
VTEの副作用がないため、高血圧や喫煙者も内服可能です。