過多月経とは

過多月経のイメージ写真

月経による出血量が多い状態(具体的には140mL以上)で、ナプキンが1~2時間程度しかもたなくなるほか、レバーのような血の塊が現れるようにもなります。月経痛などの症状を伴うこともあります。原因としては、ホルモンバランスの乱れも考えられますが、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症といった器質性疾患が原因のこともあります。
血液検査で貧血の有無を確認し、超音波検査などで器質性疾患の有無を確認します。
過多月経の治療に、レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS: levonorgestrel releasing intrauterine system)(ミレーナ)が適応となります。
また、月経困難症を伴う場合は、黄体ホルモン製剤(プロゲスチン製剤)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin : LEP)を投与することがあります。LEPは排卵を抑制し、子宮内膜を萎縮させることにより月経血量を減少させる作用があります。

ミレーナについて

ミレーナの説明イラスト

ミレーナは、子宮内で持続的にプロゲスチン(レボノルゲストレル)を放出する、レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS: levonorgestrel releasing intrauterine system)です。プロゲスチンは子宮内膜の増殖を抑制し月経血量を減少させる効果があります。1度挿入すれば、定期的に確認を行いながら約5年間は挿入を継続できます。内服薬のように飲み忘れる心配がないのも利点です。次のような効果が期待できます。

  • 月経による出血量を減少させ、貧血を改善させます。
  • 月経痛を和らげます。
  • 子宮内膜症による、月経痛、排便痛、性交痛、腰痛などの症状が改善されます。
  • 子宮体がんの予防にも効果があります。

現在は過多月経や月経困難症に対して保険適応があり、こちらの目的で使用することが多くなっています。

ミレーナは避妊具として挿入することがあります。避妊目的の場合は自費診療となります。
プロゲスチンが子宮内膜に作用し続け、結果受精卵が子宮内膜に着床しにくくなり妊娠しにくくなるというものです。避妊効果は高く、妊娠率は装着初年度0.1%、装着後5年間で0.5%と報告されています。

ミレーナ装着までの大まかな手順

  1. 1. 問診と診察
    子宮に何らかの疾患(子宮内膜症、子宮筋腫、子宮内膜増殖症 など)がないかを確認します。例えば、大きな子宮筋腫がある、子宮内腔が大きく変形しているなどの場合、IUSの位置がずれたり、適切な位置に挿入できないことがあります。また月経量が多い場合は、自然に脱落してしまうこともあります。このほか腟炎などの症状がある場合は、そちらの治療が優先となります。
  2. 2. ミレーナ挿入
    診察の結果ミレーナ挿入に問題がない場合、月経開始後7日以内にミレーナを挿入します。確実に妊娠していない時期を選びます。簡単に挿入できる場合は数分で終わります。出産経験の有無に関係なく使用は可能です。なお、子宮口がうまく開かない場合は、挿入時に痛みを伴うことがあります。
  3. 3. 定期検診
    ミレーナは1度挿入すると5年ほど効果が持続しますが、挿入後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、その後は6ヶ月おきに定期的な検診を受けるようにしてください。ミレーナが部分脱落や穿孔していないかを確認します。そして5年が経過し、さらに続けるようであればミレーナを新しいものと交換します。抜去時に疼痛と出血を伴うことがあります。なお過多月経、子宮に何らかの疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症 など)があるという患者さんについては、もう少し短い間隔で定期検診を受けていただきます。

ミレーナの注意点

装着に関するご注意

多くの場合、月経開始後7日以内に挿入します。挿入の際には痛みをともなうことがあります。

妊娠の兆候には注意してください

ミレーナにより約20%は無月経となりますので、妊娠の兆候にはとくに注意を要します。IUSを装着したままの妊娠では絨毛膜羊膜炎、流早産、常位胎盤早期剥離、前置胎盤のリスクが高くなると報告されています。妊娠した時には、安全にIUSを抜去できる場合は抜去を勧めます。抜去の際に、自然流産に至ることがあります。
妊娠した場合は、子宮内の妊娠を阻害するため、異所性妊娠にも注意します。

脱出

正しい位置にあるかを定期的に確認するために、必ず定期検診を受けてください。(挿入後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、その後6ヶ月おき)
気付かない間の脱出は、2〜10%と報告されています。

糸を引っ張らないでください

子宮口付近には、ミレーナを取り外す際に用いる糸(細い針金状)がありますが、この糸は絶対に引っ張らないでください。

感染、帯下

ミレーナを挿入していることにより、骨盤内や子宮内の感染・炎症が助長されることがあります。装着時の感染が原因の場合は、装着後20日以内に発症することが多いようです。性感染症のある方では、骨盤内の感染のリスクが高まるのでミレーナ使用は禁忌です。ミレーナが原因と思われる場合は、ミレーナを抜去することがあります。

穿孔

頻度は低いですが、多発筋腫や粘膜下筋腫、帝王切開の既往、産後から日が浅いなどの場合は穿孔の頻度がやや上昇する報告(1000件の装着につき2件)があります。
分娩後は子宮の回復(6週間以上)を待って装着します。授乳中の方も穿孔のリスクが高くなります。